東京都砂川町(現・立川市)にあった米軍基地の拡張計画に反対する学生らが1957年、基地に入った「砂川事件」で、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は、日米安保条約に基づく刑事特別法違反で有罪となった4人の元被告について、再審開始を認めない決定をした。18日付の決定で、元被告らの特別抗告を棄却した。今回の請求で再審が開かれないことが確定した。
この事件では一審が「米軍の駐留は憲法9条に反する」と無罪を言い渡したが、最高裁大法廷が1959年に「日米安保条約のような高度に政治的な問題に司法判断はしない」などとして破棄した。当時の田中耕太郎・最高裁長官が、米国側に裁判の見通しなどを伝えたとする米公文書が2008年以降に相次ぎ見つかったことを機に、元被告らは「公平な裁判を受ける権利を侵害された」と主張し、再審を求めていた。
東京地裁は16年3月の決定で、公文書の内容を検討したうえで、「刑事手続きの一般的事項を述べたにとどまる」と認定。最高裁長官は裁判所を代表して外部と交際することがあり、米国大使館関係者と面会したことで不公平な裁判をする恐れが生じたとはいえないとして再審請求を棄却。東京高裁決定も昨年11月の決定で、地裁の結論を支持した。最高裁は今回の決定で、田中元長官の行動については言及しなかった。
再審請求したのは当時、学生だった土屋源太郎さん(83)ら4人。最高裁が一審の無罪判決を破棄した後の差し戻し審で罰金2千円の逆転有罪となり、確定した。(岡本玄)