オリックス・バファローズで先発の一角を担う山岡泰輔投手(22)は2013年、瀬戸内のエースとして夏の甲子園に出場した。広島大会の決勝では、延長引き分け再試合を経て、広島新庄との激戦を制した。「甲子園を目指したことは一度もない」という山岡投手が、高校野球で得たものとは。球児たちに向けて、振り返ってもらった。(原田悠自)
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高校野球で培ったものは、相手打者が何を考えているかを読み取る力だと思います。強豪校ではなかったので、対戦校の試合のビデオを事前に見て、打者の癖や、得意なコースの分析を欠かしませんでした。試合中も打者のしぐさや次打者の素振りの様子などを見て、配球を考えていました。ノートに書くと、書いたことに満足してしまうと思ったので、相手の情報は常に頭の中にインプットする意識を持っていました。そうしていくうちに、「打てるもんなら打ってみろ」「自分さえ抑えれば勝てる」と自信がつきました。
高校3年の春の県大会で優勝しました。一番になった心地よさというよりも、「負けた時の恥ずかしさや悔しさを味わいたくない」と、夏を見据えた思いがチームに生まれました。そうした負けん気が、広島大会で勝ち上がれた要因だったのかもしれません。
夏の広島大会決勝の広島新庄戦は、ヒットを何本打たれ、三振をいくつ奪ったか、全く覚えていません。強いて言えば、初戦の翌日の休養日に、当時の小川成海監督が僕の好物の炊き込みごはんを作ってくれたことですかね(笑)。
あの試合は、先に1点を取ったチームが勝つと思っていた。僕はひたすら、スコアボードに「0」を並べることだけを考えていました。極端に言えば、「こんなにいい試合ができるなら、3試合でも4試合でも投げてやろう」と。だから、再試合の八回に瀬戸内が1点を挙げた瞬間は、うれしさの半面、「これで試合が終わっちゃうな」と、寂しさも感じました。
甲子園では、初戦で明徳義塾(高知)に1―2で負けました。失投でないスライダーを本塁打にされるなど、レベルの高さは感じましたが、負けた悔しさはありませんでした。「ああ、高校野球に満足したな」って。厳しかった広島大会で優勝できて、甲子園の常連校を相手に接戦に持ち込めただけで、十分でした。
僕は小さい頃から、甲子園を目指して野球に打ち込んだことは、一度もありません。試合に出て、マウンドに立ちたい。そのためにはどうしたらいいか、ということを考え続けた結果、その後の野球人生があるのだと思います。
僕にとって5年前の夏は、純粋に野球を楽しめたいい思い出です。球児のみなさんにも、全力で楽しく野球をやってもらいたいです。頑張ってください!
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やまおか・たいすけ 広島市出身。瀬戸内を卒業後、社会人野球の東京ガスを経て、2016年にドラフト1位でオリックスに指名された。1年目の昨季は先発として24試合に登板し、8勝を挙げた。身長172センチ、体重68キロ。右投げ左打ち。