西日本豪雨の被災地で、球児を励ました宣誓文がある。「どんな状況も克服し、それを乗り越えて挑戦します。それが野球だから」。20日にあった広島大会2回戦。誓った本人が体現する。2点を追う四回、安芸南の田代統惟(とうい)(3年)が放った打球は左翼席で跳ねた。
克服・挑戦…それが野球だから 広島大会、選手宣誓全文
地方大会の熱中症対策呼びかけ 朝日新聞社と日本高野連
豪雨が地元の広島市安芸区の矢野地区の景色を変えた。友も失った。野球と距離を置いてボランティアをし、現実を見つめた。経験して感じた思いを、宣誓の言葉に込めた。
1点差とし、迎えた六回。1死満塁の打席で右足がつった。十分な準備ができなかったからだろうか。だが、田代は諦めない。「最低限の仕事を」と中堅へ同点犠飛を運んだ。
エースで4番の主将。右足の影響で外野に回ったが、2度も志願して、マウンドに戻った。瀬尾将大監督は、「指導者として(再登板は)やっちゃいけないと分かっていた。あいつの目に圧倒された」。
三原に5―11で敗れた。「勇気と力を与えられたか分からないけど、全力プレーはできた。そこだけは胸を張って言えます」。過酷な夏に立ち向かった17歳の気持ちは、立ち上がる被災地にきっと届くはずだ。=福山市民(小俣勇貴)