東日本大震災で津波に襲われ、その痕跡が残る岩手県陸前高田市のガソリンスタンド店で31日、津波の高さを伝える看板が撤去された。国道のかさ上げ工事に伴い、店が移転するためだ。看板だけを取り外し、近くの移転先で8月上旬から展示する。
「オカモトセルフ陸前高田」の看板には「津波水位15・1M」という表示とともに、津波到達点を示す矢印が設けられている。店は海から約500メートルの場所にあったが津波で全壊。翌年に同じ場所で再開する際、看板をあえて残した。
今回移転を余儀なくされた店側は、そのままの高さで看板を移設できるよう求めてきたが、県の条例に抵触して認められず、5メートル角の看板のみ設置できることになった。従業員の熊谷定雄さん(70)は「この場所にこの高さであったからこそ、多くのお客さんが見上げながら津波の怖さを実感できた。撤去は残念ですが、残った看板を使って新店舗でも津波の教訓を伝えていきたい」と話した。(渡辺洋介)