寺にお供えされた食品を困窮家庭へ――。そんな活動をする「おてらおやつクラブ」というNPOがある。福祉団体などを通じた間接的な提供を原則としてきたが、その方法だけでは対応できないケースが増えてきた。「見捨てるわけにいかない」。そんな家庭に直接届ける活動にも本格的に乗り出した。
事務局は奈良県田原本町の安養寺にある。代表理事は松島靖朗住職(42)。大阪市で2013年、生活苦の母子が遺体で見つかった事件を機に始めた。
お供えされる様々な食品の中で、賞味期限が迫っていない菓子や米などを届ける。全国876の寺院が宗派を超えて参加。365の支援団体を通じて食品を受け取る子どもは、約9千人にのぼる。
メディアでの紹介が増えるにつれ、一昨年から問い合わせが急増。公的支援を受けず、孤立しながらも声を上げられずにいる「見えない貧困」があぶり出された。だが受取先となる団体を紹介できないことも少なくなかった。居住地の近くに団体がなかったり、親が昼夜掛け持ちで働いていて出向く時間がなかったり。「助けて」の声を受けたのに届けられない。
事務局内では「後方支援に徹するべきだ」との意見も出たが、結論は「これが最後のセーフティーネットになる人もいる」。今年4月、奈良から困窮家庭に食品を送る「直接支援」をホームページで掲げた。
事務局はどのように困っている…