(11日、Jリーグ 広島2―0長崎)
最新の試合結果はこちら
原爆で多くの命が奪われた8月、被爆地を本拠とする広島と長崎が対戦した。「ピースマッチ」と命名された一戦には、両クラブの思いが詰まっている。今季J1に初昇格した長崎の高田社長は「世界で平和を語れるのは、この2クラブしかない」と訴える。
広島では、プロ野球のカープが先んじて「ピースナイター」を実施してきた。戦後復興の象徴と言われるカープは球団として平和活動に取り組む。一方、今年25周年を迎えたJリーグとともに立ち上がったJ1広島は歴史が浅く、個に頼ってきた。2012年から指揮した長崎出身の森保元監督(現日本代表監督)は8月になるとミーティングで「サッカーができることに感謝しよう」と選手に訴えた。だが、森保氏が去った17年夏以降、平和を語る声は小さくなっていた。
スポーツができる日常に感謝しようと、この日、スタジアムでは小学生を対象に平和学習教室が開かれ、高校生や大学生が平和を考えるブースを出展した。被爆2世でJ1広島の久保会長は「長崎のJ1昇格が大きなきっかけとなった。これからは個人でなく、チームとして色々なメッセージを届ける」と決意を示す。
広島は「ピースマッチ」を来季以降も開催し、ゆくゆくは海外クラブを招き、世界へ発信することも思い描く。あの夏から73年、新たな祈りが始まった。(吉田純哉)