(18日、高校野球 済美3―2報徳学園)
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報徳学園・小園海斗(3年)の体に、本来のキレはなかった。打っては3打数無安打、守備では九回に失点につながる失策も。「日本一のショート」を目指した夏は、悔しさの残る形で終わった。
「打ってこいよ」
試合前、同じ一塁側ベンチで自分たちの直前に4強進出を決めた大阪桐蔭の藤原恭大(3年)から、声をかけられた。中学時代のチームメートでもある藤原がいる桐蔭と戦いたい――。そんな思いで臨んだ試合でもあった。
だが、2日前に37・5度の熱を出した体は重い。いつもなら追いつける打球に追いつけない。「対策をまったくしていなかった」という済美の先発池内優一(3年)、その後の山口直哉(3年)にもタイミングが合わなかった。「体が前に突っ込んでいた」。初戦で3本の二塁打を放った躍動感は、取り戻せなかった。
昨夏は2年生の内野手で唯一、高校日本代表に選ばれた。「日本一のショート」とグラブに刺繡(ししゅう)を入れ、さらなる高みを目指してきた。今夏の東兵庫大会ではハイレベルな攻守に、相手選手から「小園半端ないって」と嘆かれたこともある。
だが、スタートからそうだったわけではない。小学1年生で野球を始めた時は、一緒に始めた同級生の方がはるかにうまかった。「体が小さくて、ボールも怖くて」。グラウンドの隅っこでキャッチボールをするだけの日もあり、周囲からは「ほんまにチームに入るん?」と言われた。
それでも、足は速かった。一生懸命練習もした。2年生で右から左打ちに変えた。投手もやっていたが、中学からは遊撃手一筋で練習した。体が大きくなるにつれ、技術もついてきた。
「自分の力のなさです」と試合後は涙を流した。だが、野球を始めた頃から持ち続けるその気持ちは、成長の糧にもなる。「この悔しさをこれからの野球人生に生かす。球場をわかせられるようなすごい選手になりたい」。日本一のショートを目指す人生は、まだまだ、まだまだ続く。(山口史朗)