20年前の1998年、夏の高校野球の決勝戦は、今年と1日違いの8月22日に行われた。当時は横浜が京都成章を3―0でくだし、春夏連覇を達成。しかも、エースの松坂大輔投手(現中日)が、59年ぶり史上2度目の夏の甲子園決勝でのノーヒットノーランを達成する快挙まで成し遂げた。
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記録だけではない。優勝を決めたシーンも、多くの人の脳裏に焼き付いている。九回、最後の打者を外角のスライダーで空振り三振に斬った松坂が、中堅方向にくるりと向かって拳を握る、あのポーズだ。まれなエンディングに「無意識でした」と振り返る本人も、「撮ったカメラマンさんも言っていましたけど、普通は違いますよね。大体捕手の方向を見てガッツポーズして、捕手が来る」と照れくさそうに話す。
意図的ではないとはいえ、投球フォームと奪三振への意識が関係していたともいう。松坂の場合、ボールを投げた後、投球板を蹴った右足は捕手方向に出てきて、一塁側へと向かう。力が入れば入るほど動作は強くなる。「もともと右足を振っていくタイプで、三振を狙うと右足が一塁側に当然くる。狙い通り三振がとれたのを確認して、そのままの流れで後ろを向きました」と笑った。
数々の名勝負が繰り広げられてきた中で、自分たちが出場した大会が注目されるのを光栄に感じている。「僕らの前にもすごい試合はたくさんある。いまだに強く印象に残って話してもらえるのはうれしい」
甲子園の思い出を聞くといくつもある。試合中の出来事はもちろん、観客席から聞こえる相手高のブラスバンドの音楽なども覚えているという。
だが、一番はチームの結束力かもしれない。「本当に仲が良かったんです」。あれから20年が経つが、当時の仲間たちとの交流は続いている。それは試合以外の記憶から伝わってくる。たとえば自由時間だ。時間ができればみんなで行動することが多かったという。「泊まったホテルにはショッピングセンターみたいなものが隣接していて、誰かが行こうと言えば、みんなでたこ焼きを食べに出かけたりした。十分練習で打ったのに、バッティングセンターにも行きましたね」
苦楽をともにした仲間たちと最後に喜べたことは、今も最高の思い出だ。(遠田寛生)