迫力満点のフルスイングだった。一回1死一、三塁。大阪桐蔭の4番藤原恭大(きょうた)は「直球が浮き上がってくる。すごい」。金足農の右腕吉田輝星(こうせい)の球威を認めながらも、「全力で応えよう」と真っ向から挑んだ。
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1ボールから、直球をファウル、空振り、ファウル。最後は空振り三振に終わったが、捕手の菊地亮太が抱いたのは恐怖だった。「紙一重のファウル。吉田の全力は、初めて見て打てるものじゃないのに」
大阪桐蔭の思惑通りだった。吉田は力を抑えた直球と変化球を散らして打者を打ち取り、ピンチだけ全力で投げるスタイルで、この夏の主役になった。特に、ボールになる変化球を振らせるのがうまい。
だが、桐蔭打線は徹底してそれを振らない。甘い直球だけを強振する。必然的に吉田の球数、そして全力で投げる場面は増えた。
球数が100に迫った四回途中から、「下半身に力が入らなくなった」と吉田。そこに打線が襲いかかり、大量点につなげた。
「最強世代」。全国各地から集う今の3年生は入学時からそう呼ばれてきた。だが、昨秋の明治神宮大会で敗戦。以降、「自分勝手なプレーはやめよう」と「徹底力」を磨いた。毎日行う実戦形式の打撃練習では、打順が一回りするごとに選手たちで集まり、「ボール球に手を出すやつが多かった」「フライが多い」などと指摘し合う。その成果が「今までで一番の投手」(藤原)という剛腕攻略につながった。
1991年夏の初出場優勝から、春夏合わせて8度目の頂点。「平成」を席巻した王者が、平成最後の夏に「最強」を証明した。(山口史朗)