張り詰めていた気持ちが一気に解放されたのだろう。春夏連覇を決め、アルプス席へあいさつをすませた瞬間、大阪桐蔭(北大阪)の主将中川はダムが決壊したかのように泣きじゃくった。
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「色んな不安がありました。負けたらどうしようとか……」
「最強」と言われる中で春夏連覇を宣言し、走り続ける緊張感はどれほどすさまじかったか。逸材ぞろいの中でも「一番良い打者は中川」と誰もが認める実力を持つが、今夏の甲子園は打率2割台と苦しんだ。
それでも「個人よりチーム」と決して下を向かない。中川が尊敬してやまない前主将の福井章吾さん(現慶大)をして「自分を押し殺して。あそこまでの重圧に、僕は多分耐えられません」と言わしめた。
西谷監督が中川に歩み寄り、ねぎらうように肩を抱いた。長い、長い1年が終わった瞬間だった。(山口史朗)