障害者の法定雇用率を中央省庁が水増しした疑いがある問題を受け、朝日新聞が22、23日に47都道府県(教育委員会などを含む)の状況を調べたところ、半数以上の28県で障害者手帳などの証明書類を確認していない職員を雇用率に不適切に算入していたことがわかった。大半が、対象者を具体的に定める厚生労働省のガイドラインの理解不足を理由としている。
拡大解釈が横行、手帳確認「必要と思わず」 障害者雇用
国や地方自治体、企業は、障害者雇用促進法で従業員の一定割合(法定雇用率)以上の障害者を雇用する義務がある。ガイドラインは、算入できる対象を身体障害者手帳や知的障害者の療育手帳の交付を受けている人などと定める。身体障害者は手帳がなくても認められる例外があるが、都道府県知事の指定医か産業医の診断書などが必要になる。
今回の調査は都道府県の知事部局と教育委員会を対象とし、警察本部は発表分を加えて集計した。その結果、この三つのいずれかで手帳などの証明書類の確認をしていなかったのは28県あった。7県が「調査中」と回答し、12都道府県は不適切な算入はなかったとした。
23日に発表した茨城県は、2017年度時点で知事部局や教育庁などで436人を算入していたが、このうち118人がガイドラインで求められている手帳などの確認をしていなかった。すべて採用後に障害を持ってから算入された職員で、本人からの届け出がないまま算入したケースもあった。30年近く前から続いていたという。担当者は「認識不足だった。水増しの意図はない」と説明した。
長野県も同日、今年6月時点で算入していた99人のうち11人が未確認だったと公表。担当者は「ガイドラインへの認識が甘かった。(障害者)手帳を取って下さいとは言いにくかった」と話す。
石川県と同県教委も、障害者手帳や診断書を確認せず、本人の自己申告をもとに算入していた。手帳のない人などを除くと、昨年6月時点の雇用率は当初の公表値2・41%から1・41%に、県教委が2・19%から1・45%に下がり、それぞれ当時の法定雇用率の2・3%と2・2%を大幅に下回る。
島根県では身体障害者に限った採用試験の合格者については採用時に手帳を確認していたが、ほかの職員には毎年11月に全職員が提出する「自己申告書」をもとに算入していた。長崎県では、自己申告書の病歴欄や、病気休暇などの申請に使う指定医や産業医ではない医師の診断書をもとに算入していたという。
環境省も水増しの疑い
また、中央省庁では環境省で水増しの疑いがあったことが23日、関係者への取材で新たにわかった。これで、農林水産、総務、国土交通、防衛、法務を加えた計6省で水増しの可能性があることになった。国交省では昨年6月時点で雇用していた890人の障害者のうち、半数以上が障害者手帳を持っていないとみられるという。中央省庁での水増しは千人規模になる可能性がある。
障害者手帳や診断書などを確認せず、雇用率に算入していた28県
青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、埼玉、千葉、富山、石川、福井、長野、静岡、兵庫、奈良、島根、広島、徳島、香川、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、宮崎、沖縄
※朝日新聞が各都道府県と教育委員会を取材。県警は発表分のみ含む。三つのいずれかで明らかになった都道府県を集計