四角い顔のあの男が帰ってくる――。観客動員延べ8千万人を記録した映画シリーズ「男はつらいよ」。1969年の第1作公開から来年で50年。原作者の山田洋次監督(86)が節目の年の公開に向け、前作から22年ぶり、50作目となる新作に挑むことになった。
「『男はつらいよ』50周年プロジェクト」と名づけ、6日午後、東京都内で記者会見して発表する。
「寅さん」こと車(くるま)寅次郎を演じた渥美清さんが68歳で亡くなったのは、1996年8月。シリーズは第48作「寅次郎紅(くれない)の花」(95年)で幕を閉じた。コンピューターグラフィックス(CG)を使った第49作「寅次郎ハイビスカスの花 特別篇(へん)」(97年)は渥美さんへの追悼作でもあった。「渥美さんが演じてこその寅さん。代わりをできる俳優はどこにもいない」。シリーズの継続に、山田監督は慎重な姿勢を崩さなかった。
だが、テレビ版を含む全作を収録したDVDマガジン(全50巻、2011年1月~12年11月発売)が累計150万部を突破、品切れになるなど人気は根強い。寅さんのファッションに注目した女性誌も発行された。50作目の撮影に今秋にも入り、第1作の公開から50周年を迎える来年の公開をめざす。山田監督が新たに脚本を執筆。妹さくら(倍賞千恵子)や夫・博(前田吟)、おい・満男(吉岡秀隆)ら寅さんファミリーが一堂に会する。寅さんの故郷、東京・葛飾柴又でのロケも予定されている。
主演はもちろん、渥美清さん。過去の名場面を織り込み、場面を展開するという。マドンナなどほかの出演者については後日発表となる。
松竹は「昭和、平成と寅さんを愛してくれた多くの方々への感謝とともに、これからの若い人たちにも魅力を伝えたい」と言う。(編集委員・小泉信一)