20日投開票の自民党総裁選で、安倍晋三首相と石破茂・元幹事長の両候補が並ぶ初めての街頭演説会が15日、佐賀市内であった。アベノミクスの成果を強調する首相に対し、石破氏は「正直」な政治の必要性を訴えた。
特集「安倍×石破 二人が見る日本―自民党総裁選2018」
15日夕のJR佐賀駅前には、約1200人(自民党佐賀県連発表)が集まった。首相は、2012年の政権復帰以降に改善した経済の指標を次々と挙げ、「まっとうな経済を私たちは取り戻すことができた」と声を上げた。締めくくりには「いよいよ憲法改正に取り組む時が来た」として、9条に自衛隊を明記する意義に触れ、「子どもたちの世代に、誇りある日本を引き渡していく先頭に立っていく」と訴えた。
首相にとって、街頭演説は鬼門でもある。森友・加計学園問題の批判が高まっていた昨夏の東京都議選では、「辞めろ」コールをする聴衆を指さし、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と反論して物議をかもした。昨秋の衆院選では一時、街頭演説の日程公表を控えていたほどだ。
13日に首相を支持する国会議員らが都内で開いた街頭演説会では、参加者から「安倍首相は逃げているんじゃないか」と言われる一幕もあった。首相は15日の演説では、「私は至らない人間だ。謙虚に丁寧に政権運営にあたって参る決意だ」と反省を口にした。
一方、地方票に活路を求める石破氏は世論の喚起につなげようと各地での街頭演説に力を入れてきた。この日、首相が直前に京都市のホテル内で行った演説会の内容をほぼ踏襲したのに対し、石破氏は街頭では党員以外の聴衆が多いことを意識し、「正直」という言葉を何度も使って政治の信頼回復の必要性を訴えた。
演説終盤には、佐賀にゆかりがあり、武士の心構えを説いた「葉隠」の一節を紹介したうえで、「私利私欲を考えたり、保身を考える自民党であってはダメだ。首相官邸、国会、政府は国民のためのものという原点を取り戻したい」と訴え、「いろんな数字をごまかしてはいけない」「すべて正直に、すべて公開し、すべて謙虚に」とたたみかけた。
国民にアピールする機会となる総裁選の演説会は、北海道での地震の影響や首相の外遊日程などを受け、選挙戦となった12年総裁選に比べて大幅に減少。両氏そろって街頭に立つのは、この日の佐賀と16日の仙台市の2カ所にとどまる。(南彰)