広島市の原爆ドーム近くの元安川で料理を提供している「かき船」について、被爆者らが「鎮魂の場にふさわしくない」として河川占用許可の取り消しを国に求めた訴訟の判決が19日、広島地裁であった。小西洋裁判長は、国の許可の判断に「看過しがたい過誤があるとは認められない」として原告側の請求を退けた。
訴えていたのは被爆者や近隣住民ら19人。訴状などによると、かき船の運営会社は、国から治水上の理由で撤去を求められ、移転を計画。2014年12月、上流に約400メートル離れ、原爆ドームの約200メートル南に位置する現在地の河川占用許可を国から得て、15年9月に営業を再開した。
被爆者らは、原爆ドーム周辺は「鎮魂と平和への祈念の場」で、「酒食を伴う施設の営業は耐えがたい苦痛だ」と主張。かき船は桟橋に強固に接続され、実質的に建築物にあたり、建築基準法や河川法に違反すると訴えた。
判決は、河川法など関連法令の趣旨が「平和的・宗教的平穏に関する利益」を保護しているとまでは言えないとし、近隣住民を除く被爆者らには原告適格(訴えを起こす資格)がないと判断した。