中国地方の総合病院の産婦人科で働いていた男性医師(当時50代)が自殺したのは業務による過労が原因だとして、妻が国を相手に労災認定を求めた訴訟の判決が29日、広島地裁であった。高島義行裁判長は「長時間労働や連続勤務などで心身の状態が悪化した」と判断。遺族補償給付を支給しないとした国の処分を取り消した。
判決によると、男性は約300の病床を備える総合病院で、産婦人科部長を約10年間務めていた。2009年に精神疾患を発症し、病院の敷地内にある自宅のガレージで首をつって死亡した。
国側は訴訟で「申告された時間以外の時間外労働は認められず、精神疾患の発症は業務に起因したとはいえない」などと主張。だが判決は、男性が担当していた入院患者のカルテの記載内容などをもとに、発症の半年前から1カ月におおむね80時間以上の時間外労働をしており、申告していた時間を大きく上回っていたと認定した。
また、この病院の産婦人科医は2人しかおらず、休日でも両名が関与する可能性のある手術や出産に備えるなど、3人以上いる場合とは心の余裕が異なるとする専門家の証言なども踏まえ、発症と業務の因果関係を認めた。
男性の妻は判決後の会見で「裁判をすることで夫の苦悩を知った。この裁判が産婦人科医の労働環境の改善の一助になることを願っています」と話した。所管の労働局の担当者は取材に「判決文を精査して関係機関と協議の上、対応を決めたい」としている。(成田愛恵)