約3千キロを接する米メキシコ国境を越え、米国に密入国する人々が絶えない。トランプ政権は越境した親子を引き離して収容し、移民の意欲をそごうとしたが、国内の強い反発を招き、逆に移民支援の動きが広がっている。(マッカレン=鵜飼啓)
メキシコ湾にほど近い国境の町、テキサス州マッカレンのバスターミナル。8月下旬、長距離バスの出発時刻が近づくたびに、大きな封筒をそれぞれ手にした一団が姿を見せた。
封筒の表には「私は英語を話せません。手助けをお願いします」。裏にはこれから乗るバスのルートが記されている。
許可なく国境を越え、入国管理当局に拘束された人々だ。亡命を申請するなどして審査の間は保釈され、ここから身元引受人の親戚らのもとに向かう。
中米ホンジュラスから来たホセ・アルフレド・パスさん(35)は12歳の娘を連れていた。「コヨーテ」と呼ばれる密入国あっせん業者に5500ドル(約60万円)払い、陸路を1カ月。ゴムボートで国境の川を越えると米当局に捕まり、亡命を求めた。「母国は犯罪が横行して危ない。親戚が殺され、遺体はゴミ捨て場に捨てられた。警察は頼りにならない」と訴える。ノースカロライナ州の親戚を頼るという。
保釈されると近くのカトリック教会の一時受け入れ施設に身を寄せ、切符などの手配が済むとターミナルに来る。1日50~150人が各地に散っていく。
「経由地で困ったら、灰色の犬のマークを掲げたカウンターに行きなさい」
ターミナルのベンチで移民に声をかける女性がいた。7月に発足した支援グループ「怒れるおばさんとおばあさんの会」のエリザベス・カバソスさん(42)だ。
犬とは、長距離バス「グレーハウンド」のトレードマーク。言葉に不自由な移民が乗り換えで間違えないように、との助言だ。
カバソスさんは毎日ターミナルに詰め、バスの切符の確認や身元引受人との連絡を手伝う。無料で依頼できる弁護士リスト、歯ブラシなど生活必需品や軽食を詰めたバッグも提供する。
カバソスさんは交流サイト「フェイスブック」での友人のやりとりを見て参加した。「表に出るタイプではなかった」というが、ある出来事で、いてもたってもいられなくなった。
それはトランプ政権による、密…