28日夕に大きな津波が襲ったスラウェシ島中部のパル。津波に遭遇して命からがら逃げ延びたものの、一緒に居たいとこが行方不明になった近隣地区の住民が30日、朝日新聞の取材に当時の状況を振り返った。
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パルから車で2時間離れたパンバロウォに住むエルニさん(52)らは28日、軽トラの荷台に乗り、パルで毎週金曜日に開かれるマーケットに花を売りに出かけた。仕事を終えパルの沿岸部を車で走っていた午後6時すぎ、大きな揺れに襲われ、緊急停車した。マグニチュード(M)7・5の大地震だった。
エルニさんは荷台から降りて運転手らと車に身を寄せ、いとこのサリナさん(50)と義妹のアンディスタさん(51)は荷台の上で身をすくめた。
「一緒に固まって! 離れちゃダメ!」。サリナさんがそう叫ぶと、全員で抱き合って車にしがみついた。
直後、海から津波が勢いよく押し寄せてくるのを目にしたエルニさんは、恐怖のあまり泣き出した。揺れから数分後、津波が襲いかかり、車ごとさらわれて海側に数メートル押し流された。
津波の高さについて、エルニさんらは取材に「そこの電柱と同じぐらい」と、高さ7メートルほどの電柱を指さした。
津波にのみ込まれた際、互いに体をつかんでいたつもりだったが、波が少し落ち着いた時にはサリナさんだけ居なくなっていた。
「サリナ! サリナ! どこにいるの!」。エルニさんは大声で海に向かって呼び続けた。一度だけ「ここにいる」と、とても遠くから聞こえた気がしたが、姿は見つけられなかった。その後も1時間、名前を呼び続けたが、「また別の津波が来たら危ない」と周りに諭され高台に避難した。
足に擦り傷を負ったエルニさん…