国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)は3日、核合意から離脱した米国が再開した対イラン経済制裁について、医薬品や飛行の安全など人道に関わるものについて、制裁を解除するよう命じる仮保全措置の決定を出した。ICJの決定には法的拘束力はあるが、各国に執行を強制する権限はなく、トランプ米政権が従うかは不透明だ。
ICJは決定で、「米国は医薬品や医療機器、食料品、民間航空機の修理部品などの輸出について、(核合意を離脱した)5月8日に発表した決定から生じる障害を取り除かなければならない」と強調。「米国は(輸出のための)許可や必要な権限付与を行わねばならない」となどと結論づけた。
核合意は、2015年にイランと米英仏独中ロの間で結ばれ、イランの核開発を大幅に制限する見返りに欧米からの制裁を緩和する内容。米制裁によって国際的に孤立し、航空機の老朽化が進んでいたイランは、制裁が緩和されるとボーイング社やエアバス社と180機以上の購入契約を締結したが、5月の米政権による制裁再開決定で頓挫。また、8月からの制裁で、イランでは外国製の薬不足なども起きていた。
イラン側はこの決定を歓迎。ザリフ外相は3日、ツイッターで「制裁中毒になっている米国の敗北だ」と主張した。イランでは第三国も対象となる「二次的制裁」を恐れた欧州企業などが次々とイランから撤退しているが、ジョネイディ副大統領(法律問題担当)は「企業がイランに戻ってくるのを促進する」と語った。
イランは今年7月、イスラム革命(1979年)で倒れたパーレビ王朝が、55年に米国と結んだ友好経済関連の条約に基づき、制裁は条約違反であるとして、ICJに提訴していた。
これに対し、ポンペオ米国務長官は3日、友好経済関連の条約の破棄を宣言。「イランはICJを政治目的で悪用している」と批判。今回の決定について「米国はこれまでもイランの市民への人道支援に取り組んでおり、(決定と関係なく)これからも継続する」と語った。(テヘラン=杉崎慎弥)