トルコでテロ組織を支援したなどとして米国人牧師が長期拘束されている問題で、米財務省は1日、「深刻な人権侵害にあたる」としてトルコのギュル法相とソイル内相を対象とする経済制裁を科した。両氏の米国内の資産を凍結し、米国人との商取引を禁じる。トルコは北大西洋条約機構(NATO)のメンバーで両国は同盟関係にある。その閣僚への制裁は異例。トルコは強く反発しており、両国関係の悪化は必至だ。
トランプ氏「トルコに大規模制裁」 米国人牧師の拘束で
拘束されている米国人はキリスト教福音派のアンドルー・ブランソン牧師。トルコ政府は、トルコで2016年7月に起きたクーデター未遂事件は在米のイスラム教指導者ギュレン師と信奉者団体が主導したとしている。ブランソン氏はこの団体を支援したなどとして、逮捕、起訴された。
ムニューシン財務長官は1日の声明で「トルコ当局による不正義な勾留と訴追は全く受け入れられない」「訴追を裏付ける証拠がない」と非難。ギュル、ソイル両氏が逮捕などに主導的な役割を果たしたと断定し、制裁に踏み切った。
ブランソン氏は今年7月に自宅軟禁となったが、トランプ米大統領は「信仰心を持った無実の者はすぐに解放されるべきだ」と要求し、大規模制裁を辞さない構えを見せた。だが、トルコの裁判所は先月31日、釈放申請を却下していた。
キリスト教福音派はトランプ氏の支持者が多く、11月の中間選挙を前に強硬姿勢を示すことで支持者にアピールする狙いがあるとみられる。
制裁措置の発表を受け、トルコ外務省は1日、「米側の決定はトルコの司法制度への介入であり、両国間の問題解決に向けた努力を損なうものだ」と反発する声明を発表。制裁への対抗措置をとる方針を示した。(ワシントン=杉山正、イスタンブール=其山史晃)