フェイスブック(FB)が日本に上陸して今年で10年。社会に浸透した一方、情報流出の恐れや、ユーザーの「高齢化」などの課題も出ています。どう対処するのか、フェイスブックジャパンの長谷川晋・代表取締役(41)に聞きました。
――FBは「実名」でのSNSを根付かせました。
「パソコンからスマートフォンにシフトする流れに乗れたことが大きい。スマホで撮った写真や動画をやりとりしたいというニーズに応えてきた。また、実名はやはり信頼度が高く、仕事で使われることも多い。ベンチャーから大企業まで、FBを活用したビジネスの成功例も増えた」
――日本での使われ方に特徴はありますか。
「一言で言えばビジュアル。世界的なカメラメーカーがあることもあってか、写真、動画、イラストなど多様なコミュニケーションをしている。様々な絵文字で『いいね!』ができる機能は、日本の絵文字文化に影響されたものだ。災害時の利用も活発で、世界で使われている安否確認機能は、東日本大震災をきっかけに日本のエンジニアが中心となって作ったものだ」
――若い世代はあまりFBを使っていない印象です。「FBおじさん」と揶揄(やゆ)されたりもしています。
「総務省の調査では20~30代が最もFBを使っており、違和感がある。年代にあまりこだわりはない。インスタグラム、VRツールのオキュラスなど、FB傘下のサービスを総合的に見て、良いプラットフォームになれているかが大切だ」
――インスタからFBに若いユーザーをつなげることも考えていますか。
「そういうことは考えていない。FBは実名のリアルなつながり、インスタは興味関心でのつながりで、いずれも世代を超えた本質的なニーズだ。一人の人の中にもコミュニケーションのニーズは複数あり、全世代に使ってもらいたい」
――世界で5千万人分の情報流出の恐れがあることがわかりました。
「利用者のみなさんにおわび申し上げたい。ただ、まだ調査は初期段階で、判明していない部分がほとんどだ。セキュリティーは最優先事項。フェイクニュースなどの不適切な投稿もAI(人工知能)で検知するほか、世界中で24時間、2万人体制で排除していく」
――今後の展望は。
「高齢化や地域経済、女性活躍、働き方改革など日本の課題に貢献できるところはたくさんある。人と人とのつながりを助けるプラットフォームでありたい」(聞き手・栗林史子)
はせがわ・しん 1977年、兵庫県生まれ。京大卒。東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)に入社。2002年にプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に移り、ブランドやビジネスのマネジメントに10年間従事。楽天で上級執行役員を務めた後、15年10月から現職。