東京電力福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の第31回公判が17日、東京地裁であった。16日に続いて被告人質問を受けた元副社長・武藤栄被告(68)は、震災3年前に算出した津波予測の根拠になった国の地震予測を正式に採用したことはないとの見解を改めて示した。
国の地震予測は2002年に公表された「長期評価」。検察官役の指定弁護士は、長期評価に基づく津波対策を3被告が08年2月にいったん了承したものの、同年6月に津波予測が「最大15・7メートル」になると聞いた武藤氏が翌7月、対策を先送りしたと主張している。
この日の公判で指定弁護士は、武藤氏が08年3月に福島県を訪れて原発の地震対策の見直し状況を説明した際に東電が用意した想定問答に言及。「津波対策には長期評価などの最新の知見を踏まえる」という記載があったため、「長期評価を採り入れることが会社の考えだったのではないか」と質問した。しかし、武藤氏は想定問答について「目は通したが必要ないと思い、詳しくは知らない」と答えた。(杉浦幹治、川原千夏子)