高校野球の秋季東北地区大会は18日、秋田市のこまちスタジアムで決勝があり、八戸学院光星(青森1位)が盛岡大付(岩手1位)を5―3で下し、5年ぶり5度目の優勝を果たした。11月に東京・神宮球場である明治神宮大会に出場する。
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高校球児にとって、伸び盛りの秋。八戸学院光星は、勝ちながら強くなってきた。象徴的だったのが、エースの後藤丈海(たけみ、2年)だ。
七回1死満塁のピンチ。リードは1点。初球、盛岡大付の仕掛けたスクイズが小飛球に。後藤は落ち着いて捕球し、三塁へ転送。最大のピンチを併殺で切り抜け、跳びはねながら叫んだ。「やったぁ!」。無邪気に喜んだビッグプレーをもたらしたのは、成長の詰まった1球だった。
勝敗を左右する場面で、バッテリーはスライダーを選んだ。後藤は、「低めに投げて併殺打を打たせようと思っていた」。打者がバントの構えをすると、とっさに高めに浮かせた。「フライになればと思って」。思惑通りに。この機転が、後藤の変化だった。
仲井宗基監督が、夏までを振り返る。「後藤は気持ちが強すぎてね」。熱くなり、力任せにねじふせようとしがちだった。この秋、エースとして強豪を相手にして、学んだ。
準々決勝では、羽黒(山形2位)との1点差ゲームで完投勝利。準決勝は、終盤に強い花巻東(岩手2位)を相手に3失点で投げきった。「打者をしっかり見てタイミングをずらしたり、力を抜くところを作ったりできるようになってきた」と後藤。接戦のなかで、冷静さの必要性を痛感した。
そして、決勝では五回途中から救援して好投し、最後まで主導権を譲らなかった。「勝つためのピッチングを覚えたと思う」と監督。その評価通りの投球だった。
明治神宮大会だけでなく、来春の選抜への出場も、ほぼ確実となっている。仲井監督が言う。「秋の一番最後まで公式戦をやれる経験値は大きい。なによりも、東北の厳しくて長くてつらい冬を、目標をもって練習できることが大きい」
それを踏まえて、試合後のミーティングで選手たちにこう伝えた。「まだまだミスもあったな。でも、もっと強くなるよ」。光星の成長の秋は続く。(小俣勇貴)