高校野球の秋季和歌山県大会は9日、紀三井寺球場で決勝があり、4季連続での甲子園出場を狙う智弁和歌山が市和歌山に9―6の逆転勝利で優勝した。新チーム発足から指揮を執ってきたのは、プロ野球阪神などでプレーしたOBの中谷仁監督。今夏の甲子園直後に高嶋仁・前監督からバトンを受け継いでから初めて臨んだ公式戦で結果を出した。
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「ここが頑張りどころやぞ」。智弁和歌山のベンチに野太い声が響いたのは、六回裏の攻撃前だった。表の守備で市和歌山に1点を奪われ、点差は6点に広がっていた。「いやあ、(負けを)覚悟しました」と監督自身は振り返る。それでも選手を鼓舞し続けた。
選手が応える。五回までは散発2安打で無得点だった打線が、この回だけで5長短打。一気につながり、5点を返した。七回には4番東妻純平(2年)が左中間へ2ランを運び、逆転に成功。八回にも2点を加えた。
甲子園で何度も見せてきた逆境での勝負強さは、このチームにも息づいていた。ただ、ベンチの中の雰囲気は少し違って見える。
選手を激しいゲキで引っ張ってきた高嶋前監督に対し、中谷監督は後押しする言葉をよく選ぶ。「高嶋先生のような発破はかけられないですけど、選手が迷わないように、勇気をもってバットを振れるように、サポートできれば」
そうやって、約2カ月かけてチームを作り、つかんだ優勝。中谷監督は「高嶋先生が育てた選手が中心となってチームを引っ張ってくれた。頼もしかった」と謙虚に言った。ただ今後の目標になると強気だ。「和歌山で1番になって、近畿大会に出場することが第1関門。近畿では4強とは言わず、その大会で1番になれるように挑み、相手に全力でぶつかっていく」(小俣勇貴)