繊維メーカーが、「再生医療」分野へ続々と参入している。繊維加工で培った技術を医療やバイオ事業に応用してきたが、さらなる成長分野だと注目し始めた。10日にはグンゼが参入を表明するなど、各社は開発に力を注ぐ。
再生医療は、患者にとっては度重なる手術を少なくし、経済的な負担も減らせるとして期待されている。グンゼは10日、ひざ軟骨の再生を促す医療用シートを今秋に売り出すと発表した。手術の際、損傷部分に貼り付けて使う。軟骨に小さな穴を開けてにじみ出させた骨髄液とシートが一体となって、修復していく。シートは最終的に分解され、手術から約15週間で体内に吸収されるという。縦3センチ、横3センチのシートで価格は約10万円で、医療機関などへの納品をめざす。
これまでは軟骨がすり減ったり欠けたりすると、患者の体の別部分から手術で軟骨組織をとりだし、培養して移植する必要があった。このシートを使えば軟骨の採取や培養もいらず、治療費用も約10分の1に減らせるという。今秋に欧州で試験的に売り出し、将来的には日本や米国、中国にも広げていく考えだ。
東洋紡はすでに、神経再生誘導チューブを国内で販売しており、9月からは米国での試験販売を始めた。今年度中には、あごの骨の再生に寄与するというスポンジ材の国内販売を予定する。帝人は、血管修復パッチの開発を進めている。伸縮性のある素材を使うことで、子どものときに心臓手術をしても体の成長とともにパッチも大きくなっていくという。(金本有加)