2005年4月に起きたJR宝塚線(福知山線)脱線事故の遺族らが、大事故を起こした企業に高額な罰金を科す「組織罰」の創設を求め、26日に山下貴司法務相と面会して約1万人分の署名を提出する。活動開始から4年半余り。ようやく声を国に届けるまでこぎ着けたが、実現への道のりは険しい。
事故で長女の早織さん(当時23)を亡くし、「組織罰を実現する会」の代表を務める大森重美さん(70)=神戸市北区=らが22日に会見し、明らかにした。「組織罰が必要と考え、1万もの人が署名をしてくれた。これを励みに、創設に向け前進したい」と決意を語った。
事故では運転士と乗客106人が死亡、562人が重軽傷を負った。JR西日本の山崎正夫氏ら歴代社長4人が刑法の業務上過失致死傷罪に問われたが、山崎氏は12年1月、一審の神戸地裁で無罪が確定。井手正敬氏ら残りの3人も昨年6月、最高裁が上告を棄却し、無罪が確定した。
「これほどの大事故なのに、誰も罰されないのはおかしい」と疑問を抱いたのが、大森さんら遺族だ。歴代社長の裁判を通じ、広い部署に責任が分散する組織事故で、現在の法制度では幹部個人の刑事責任を問う難しさを感じていたこともあり、企業に刑事罰を科す「組織罰」が必要と考えた。組織の幹部の安全意識の向上につながるとの思いもある。
山梨県で12年12月に起きた中央道笹子トンネル天井板崩落事故の遺族も加わり、14年3月、「組織罰を考える勉強会」を設立し、大学教授や弁護士を招いて話を聞いた。イギリスでは07年に「法人故殺法」が成立し、安全管理体制の不備で死亡事故が起きた場合に企業の刑事責任を問えるようになったことなど海外の事例も学んだ。
16年4月には「組織罰を実現する会」に名前を改め署名活動を開始。JR宝塚線沿線の駅前に立ち署名を募ったが、一筆も集まらない日もあったという。
会が目指すのは、現在は個人に…