駐車場の空きが見つからない、狭くてとめづらい、出入り口まで遠い――。ショッピングモールなどの大型駐車場で、よく経験するイライラが解消されるかもしれない。自動運転技術を使った新たな駐車システムの実証実験が13日、東京・お台場の大型商業施設「デックス東京ビーチ」の駐車場で公開された。
実験は、買い物に来た客が出入り口付近に車をとめた想定で始まった。システムを開発している日本自動車研究所の所員がスマートフォンのアプリ画面で「入庫」をタッチすると、停車していた車が動き出した。緊急時の対応のため運転手が乗ってはいるが、車は自動運転で低速走行。運転手がハンドルを握ることなく駐車場の空きスペースにバックで収まった。
買い物が終わった後を想定し、アプリ画面の「出庫」をタッチすると、車は自動で出入り口に戻ってきた。実用化されれば、駐車場の空きスペースを探す手間や駐車場からの移動時間がなくなり、むだなく買い物を楽しめそうだ。
「自動バレーパーキング」と呼ばれるこの新システムは、自動運転機能を備えた車両、カメラやセンサーなどを配置した駐車場、それぞれの情報を集めて効率的に車両を誘導する管制センターの3者が連動して成り立つ。駐車場内への人の出入りを禁じて乗り降りできなくするため、ドアを開け閉めするスペースを確保する必要がなくなり、1台あたりの駐車スペースを小さくできるメリットもある。同じ面積でも、従来より2割多い台数の駐車が可能になるという。
2020年代初めの実用化をめざして、国も開発を後押ししている。導入エリアを限定したシステムなので、公道での完全自動運転より普及が早いとみている。まずは個人所有の車でなく、レンタカーなどによる観光施設での活用を見込む。海外でも実用化に向けた開発が進んでいるが、日本勢は国際標準化も視野に入れている。
マンションや病院、ホテル、工場などにも導入できるが、システムが使える自動運転車の普及と駐車場の整備が課題だ。とくに駐車場には新たな設備投資が必要で、導入する側にどこまでメリットがあるかが普及のカギを握る。同研究所の谷川浩ITS研究部長は「実験によって利便性を知ってもらい、企業に積極的に参入してもらいたい」と話す。(木村聡史)