中国の李克強(リーコーチアン)首相は13日、シンガポールで講演し、緊張が高まる米中関係について「(両国が)お互いの立場を尊重し合えば、両者の隔たりは解決することができる」と述べ、対話によって関係改善を図る意向を強調した。今月末にも予定される米中首脳会談に向けて融和ムードを演出する狙いがあるとみられる。
米中貿易摩擦、北京の空に悪影響? 「黄色警報」発令も
東南アジア諸国連合(ASEAN)の一連の首脳会議に出席するためシンガポールを訪問中の李氏は、シンガポール政府系シンクタンクが主催した講演会で演説した。会場からの質問にも、「米中両国の関係はこれまでも風雨に見舞われてきたが、全体的に見れば発展している」と前向きな見方を示した。
中国側は、今月末にアルゼンチンで始まる主要20カ国・地域(G20)首脳会議の機会に予定されるトランプ大統領と習近平(シーチンピン)国家主席の会談に向け、米国との関係修復への意欲をアピールしている。8日には北京で習氏がキッシンジャー元米国務長官と会談。韓正・副首相も同日、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏と会談し、米国企業の中国への積極的な進出を求めた。
ただ、中国側も貿易摩擦の問題では簡単には米国に譲れない。トランプ政権は、北米自由貿易協定(NAFTA)を米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)と改め、自らに有利な形に協定を作り替えに成功。中国との本格的な通商紛争に注力する構えを見せている。李氏は講演で「貿易戦争に勝者はない。双方が受け入れ可能な解決法を探さなければならない」と訴えた。(シンガポール=宮嶋加菜子、福田直之)