ミャンマーでの迫害を逃れて難民となった少数派イスラム教徒ロヒンギャをめぐり、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官は13日、受け入れ先のバングラデシュ政府に対し、ミャンマーへの帰還第1陣の移動をやめるよう求めた。現状での帰還は国際法に違反し、ロヒンギャの命を危険にさらすと警告した。
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ミャンマー政府は72万超に上るとされる難民の帰還開始に前向きで、帰還を進める姿勢を示すのは、国際社会の批判をかわすためとみられる。ミャンマー側が身元確認を終えた2200人超が第1陣として、バングラデシュから再入国することになっているという。
だが、バチェレ氏は、多くのロヒンギャ難民は帰還を望んでいないと強調。人権高等弁務官事務所によると、ラカイン州北部では今も殺害や不当な拘束といった人権侵害があるという。
国連人権理事会で9月、ロヒンギャ迫害はミャンマーの国軍が組織的に主導し、特定の民族や宗教に属する集団を殺害する「ジェノサイド」の疑いが強いと指摘した専門家の報告書が公表された。村の焼き打ちや集団レイプといった手法の残虐性も指摘された。
バチェレ氏は、迫害の責任追及が進まないなか、帰還でロヒンギャが再び人権侵害を受けると指摘。迫害の恐れがある国や地域へ追放・送還してはならないと訴える「ノン・ルフルマンの原則」に反するとの見解を示した。そのうえでミャンマー政府に、根本的な問題を解決し、帰還の環境を整えるため真剣に努力するよう求めた。
チリの大統領を務めたバチェレ氏は、9月に人権高等弁務官に就任した。(ウィーン=吉武祐)