プロ野球阪神の高知県安芸市での秋季キャンプで、矢野燿大(あきひろ)・新監督(49)が鮮明に自らのカラーを打ち出している。チームの雰囲気は、がらりと変わった。
秋だから、若手主体だからといって、量で追い込むキャンプではない。日暮れ前に練習が終わる日もあり、宿舎での夜間練習もない。矢野監督が最優先するのが、個々に「どんな選手になりたいのか」を考えさせること。そのために観察と対話を重ねている。
「監督が上で選手が下ではない。監督ではなく『矢野さん』と呼んでもらっていい」と自ら歩み寄る。どうしたら1軍に定着できるのか、話し合って方向性を決める。能力を発揮させるムードさえつくれば、選手は「(自主的に)部屋でバットを振るはず」。長く阪神を撮影するカメラマンも「選手たちの練習の合間の笑顔が増えた」と言う。
たとえば高卒3年目右腕の望月のことを監督は「もっちー」と呼ぶ。最速158キロの直球を武器に、今季は救援で37試合を投げた。今は監督の助言をもとに、課題の変化球を磨き、先発も見据えたスタミナ強化に励んでいる。紅白戦では、追い込んでから直球のサインに首を振った。「今までなら直球だけど、せっかくだからキャンプでやっていることを試したい」と、左打者の外角へのスライダーで見逃し三振を奪った。
金本前監督は若手には強制的に練習を課した。特に就任直後の3年前の秋季キャンプでは早出から夜間練習まで量を追求した。「広島よりバットを振らせている」と自負したこともあったが、今季は失敗を恐れるかのように窮屈なスイングを繰り返す選手が目立ち、17年ぶりの最下位に終わった。
矢野監督が結果を問われるのは…