プロ野球の12球団合同トライアウトが13日、福岡県筑後市の「タマホームスタジアム筑後」で行われた。48人が参加。全ての選手が日本野球機構(NPB)復帰を目指して野球の実戦形式のテストを受けるが、合格者はほんの一握りだ。舞台裏では、早くも一般企業が人材確保に動いていた。
西岡剛、成瀬善久、中井大介…きょう運命のトライアウト
参加選手が続々と帰路に就いていた午後3時過ぎ。野球人生をかけた真剣勝負を終えたばかりの元プロ野球選手の参加者たちに、名刺や封筒を持った男たちが群がった。
「うちの会社を知って」
「体力に自信がある人へ!」と大きく書かれた会社案内を渡していたのは、さいたま市に本社があるガス会社「サイサン」の坂本力さん。「新たな人生を探す時、まずはうちの会社を知ってほしい」と、初めてプロ野球12球団の合同トライアウトにやってきた。「営業職の人材を求めています。ガス器具を運ぶこともあるので体力に自信がある人がマッチする。ご縁があればうれしい」
10月にキャリア支援会社「エッジフォース」(東京)を立ち上げた大山英治さんは、同社の「元プロ野球選手」の第1号を発掘するために足を運んだ。「野球選手は体力、気力、メンタルが強い。チームワークの能力にも魅力を感じる」と話す。学生時代から野球一筋の日々を送ってきた選手にも、ビジネスマナーやパソコンなど約1カ月の研修を用意している。「スポーツ選手のセカンドキャリアは人材の宝だと思う。結果を求めることにストイックで負けず嫌いな人が多い。一般企業でも、どんどん会社の前線に出ていって活躍してほしい」と期待する。
歯科技工士を目指す選手も
「継続する力やガッツがある」と元プロ選手を評価したのは東京海上日動あんしん生命の片座泰宏さん。トライアウトの会場で声をかけられ、一般企業に就職した元選手を取り上げたテレビ番組をきっかけに社内で「行ってみよう」と決まった。求める人物像は「明るくて、素直で、挫折しない人」。やはり営業職の人材を探しているという。
トライアウトの参加者の中には、次の仕事を考えている選手もいる。2013年に現役引退した元投手で、今季は中日の1軍マネジャーを務めた関啓扶さん(25)。5年のブランクがありながらも、この日の投球は最速140キロを記録。打者3人に空振り三振、四球、四球だった。球団職員をやめる決意でトライアウトに参加したため、どこの球団からもオファーがなければ歯科技工士を目指す。「野球選手も歯が大事。新たな仕事でも何かサポートしていきたい」と話した。(波戸健一)