アーチェリーのナショナルチーム(NT)選考会が15日まで静岡県掛川市で開かれ、2020年東京五輪代表をめざす56歳の山本博(日体大教)がNT入りを逃した。04年アテネ五輪銀メダリストは、東京への第一歩と位置づけていただけにショックは大。最後のチャンスとなる来秋のNT選考会まで1年間、競技人生をかけた挑戦となりそうだ。
70メートルラウンド(72射)を毎日2回行った3日間の選考会。1日目終了時は13位、2日目を終えて18位。最終日は途中で17位まで上がったが、最後は21位。16人のNTから漏れた。山本は「話していると弱音ばっかりだ」と振り返った。
今回は19年6月の世界選手権代表の1次選考。男女各16人が選ばれ、2次(19年2月)、3次(同3月)、最終(同4月)でふるいにかけられ、各3人の代表が決まる。五輪は1次選考となる19年11月のNT選考会で男女各8人が選ばれて、2次(20年3月)、最終(同4月)を経て各3人に絞られる予定だ。
右肩の手術を経て復活を目指す山本はNTに入り、国際舞台で慣れてから、来年の五輪選考に挑む青写真だった。今回は大勢にチャンスを与えるため、NTは例年の約2倍の16人。「3位とか4位とかに入らなきゃいけないのに、16位と低いレベルのところでしくじった。昔のようなプレーができない。もどかしい」と悔しがった。
個人で1984年ロサンゼルス五輪銅メダル、04年アテネ五輪銀メダル。「中年の星」と呼ばれた。自身のブログに「世界一あきらめの悪い男ですから」と書く。「あきらめ悪くやってきたが、だんだん負けるのに耐えられなくなってきた」という。選考会期間中、午前2時くらいに目が覚め、ベッドの中で考えを巡らせた。「すごくストレスを感じた。なんでこんな年で選考会に出ているんだろうって。なんか切なくなって、これを乗り越えてまだやるの? ってね」
選考会では「引き戻し」が多かったという。一度引いてから、うち切れずに戻す。「何だろうなあ、吹っ切ろうと自分に言い聞かせても戻しちゃう。守っちゃう。開き直れない。よっぽど代表に戻りたいんですよ。その気持ちが異常に強いんですよ」
1年後の五輪に向けた選考会まで、体を絞り直して挑戦するという。「そのトレーニングに自分が取り組めないようだったら、もうやめるんでしょうね。その時は世界への挑戦はやめないといけないのかもしれない。国内だけに絞るとか。いよいよ自分の土壇場かな、来年が。それに耐えられないような人間じゃないと、その先を言うなんて恥ずかしい。自分を試してみます」と話した。(松本行弘)