選手生命の危機を越えて、一人のスケーターが再び戦いの銀盤に帰ってきた。フィギュアスケートの元全米女王、グレイシー・ゴールド(23)だ。再び試練を味わいながら、それでも再生への一歩を確かに踏み出した。
フィギュア特集 Kiss and Cry
摂食障害やうつに苦しみ、表舞台を去ってから約1年。ロシア・モスクワで2季ぶりとなるグランプリ(GP)シリーズ出場した。16日の女子ショートプログラム(SP)では、黒のドレスに身を包んだ。ブロンドヘアが、真っ白なリンクによく映えた。
ただ、内容は低調だった。冒頭のルッツ―トーループの連続3回転は、いずれも2回転に。続く3回転フリップは踏み切り違反の判定を受け、ステップはレベル2(最高は4)。2回転半ジャンプは、踏み切りが合わず半回転となった。
技術点だけでなく、演技構成点も出場10選手中最下位。合計37・51点というスコアは、首位に立った平昌(ピョンチャン)五輪金メダルの16歳、アリーナ・ザギトワ(ロシア)の半分にも満たなかった。得点を見たゴールドは、キス・アンド・クライで頭を抱え、うつむいた。
それでも、リンク裏の取材ゾーンにやって来たゴールドは気丈だった。「ここで勝てるとは思っていませんでした。ただ、米国代表として戦いたかった」。時折、おどけたように笑いながら、言葉をつなぐ。「底辺からはい上がるような半年間を過ごしてきました。たとえ紙くずみたいでも、何かを始めなければいけないって」
ゴールドの経歴は輝かしい。2…