SNS時代ならではの、国境を超えた善意だった。
18日まで行われたノルディックスキー・ジャンプ男子のワールドカップ(W杯)開幕戦のビスワ(ポーランド)大会で、平昌(ピョンチャン)五輪代表だった小林潤志郎(雪印メグミルク)が小粋な贈りものをもらった。昨季のビスワ大会でW杯初優勝したときに手にしたトロフィーのレプリカだ。
実は、今年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震のさい、札幌市内の自宅に飾っていたガラス製の優勝トロフィーが落下し、粉々に砕け散っていた。海外遠征から帰宅した後、失意の小林潤は自身のインスタグラムで、その写真とともに英語で紹介。それを知ったビスワ大会の組織委員会がプレゼントしてくれたという。
ポーランドは第2次世界大戦でドイツと旧ソ連に侵略された歴史を持つ。欧州列強に囲まれる中、「ジャンプ競技は我々の誇りだ」とポーランドのカメラマンから聞いたことがある。ジャンプW杯男子歴代3位の39勝を誇る母国の英雄、アダム・マリシュや、五輪個人金メダルを三つ獲得しているカミル・ストッフが世界トップに君臨してきた。
ファンも熱く、欧州の各ジャンプ会場に大挙して押しかけ、白と赤の同国国旗を振って大声援を送る。マリシュの出身地でもあるビスワ組織委の気配りも、心を打つほど手厚かった。
小林潤は、「地元の方々のご好意で、地震で割れてしまったワールドカップ優勝トロフィーのレプリカを僕の為に作って頂きました!!ありがとうございます」とインスタグラムで感謝の思いを伝えた。SNSにより、東欧の人たちの気持ちを身近に感じられる親善となった。(笠井正基)