選手で活躍できるのは長くない――。そんなせき立てられる思いから大学を中退し、プロの世界に飛び込んだ。男子プロバスケットボール・Bリーグのシーホース三河に加わった岡田侑大(ゆうた)〔20〕が初出場、初得点で第一歩をしるした。
落ち着き払った初得点だった。11月16日、愛知・スカイホール豊田での名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦。85―68とリードした第4クオーター残り2分14秒で、前日15日に加入発表されたばかりの背番号「30」岡田が、初めてコートに送り込まれた。約1分後、ゴール下に走り込む。ブロックに来た相手を、シュートのふりをするフェイクを一つ入れてかわし、2点シュートを決めた。
「(ブロックに)来るだろうなと思った。ワンフェイク入れてから落ち着いて。ヘッドコーチから、積極的なシュートのミスはいいから、どんどん打ってこいと言われていた」。1対1で仕掛けるなど指示通りの伸び伸びプレー。大差の終盤に用意された短時間の初舞台を「いつも以上に気持ちよかった」と楽しんだ。
189センチの得点能力にたけたガード。京都・東山高では、3年時の全国高校選手権(ウィンターカップ)で準優勝。厳しいマークを受けながらドライブで切り開き、1試合平均30・4得点は出場選手中トップだった。
男子バスケット選手の多くは大学を経てプロをめざす。岡田も拓殖大に進み、1年から中心選手となり、関東リーグで優勝した。
24歳以下日本代表候補合宿に参加するなど、将来を嘱望された逸材は、大学2年で中退した。「選手で生きていける時間はそんなに長くない。30代の半ばか、後半くらいまで。それなら好きなバスケットでできるところまでチャレンジしたい。それに、同年代より2年早くプロの経験ができる」と説明する。
拓殖大の池内泰明監督はエースのチーム離脱を受け入れてくれたと、岡田は言う。「普通なら許してくれる人は少ない。でも池さんは押してくれた。アメリカでは大学1年でドラフトにかかる選手も多い。日本もこれからそうなっていくかもしれないからなと」
好きな選手は、昨季まで三河に在籍した日本代表の比江島慎(現・豪ブリスベン・ブレッツ)。「オフボールのもらい方とか勉強になる。参考にしていた」。憧れのチームでプロの道を踏み出し、「まだフォーメーションもぜんぜん分からない。フィジカル面をしっかり強化して、この環境に慣れていきたい。チーム内でしっかり競争していきたい」と語る。
一日も早く高いレベルでもまれて成長する道を決断をした20歳。「プロの選手は髪にワックスとか使っているんですけど、自分は、いつも寝癖をつけていた。寝癖はこれからやめようと思う」。体つきも、顔つきも、プロらしく変わってくるだろう。(松本行弘)