列車との衝突事故や農業への被害……。増えすぎたシカによる問題の解決に、畑違いの鉄鋼建材メーカー社員が乗り出しました。 日鉄住金建材 建材技術研究部 開発企画グループ長 梶村典彦さん(50) 午後8時すぎ、6頭ほどのシカの群れが画面に現れた。場所はJR山陽線の線路にほど近い岡山県の山中。地面に目を凝らすと、巨大なキャラメルのような物体が見える。シカたちは代わるがわる、実に7時間にわたってその物体をなめ続け、去っていった。 縦と横の長さが16センチ、高さが10センチで重さ5キロ。物体の正体は、日鉄住金建材(東京)が開発した、世界初のシカ専用の誘引材「ユクル」だ。アイヌ語でシカを意味する「ユク」と「来る」を掛けて名付けた。映像が示すとおりの抜群の誘引力と愛らしい見た目が評価され、2016年度のグッドデザイン賞を受賞した。 新規事業を手がける部署で開発リーダーを務めた。きっかけは10年暮れ、『シカと衝突急増 JR悲鳴』との新聞記事を目にしたことだった。増えすぎたシカが引き起こす問題。農業や林業にも大きな被害が出ていた。 「商売に結びつくかは未知数だったが、現代の根深いテーマに引かれた。しかもまだ誰も解決できていない。ならば自分が一番乗りになろうと」 シカが増えたとしても、線路に入らなければ事故は起きない。なぜ、線路に侵入するのか。大学教授にも10人以上あたったが疑問は解けなかった。そこで12年春から、岐阜県の山中の線路周辺に自動撮影できる赤外線カメラを15台設置。シカが何時に、どこを通って線路に入り、どれだけ滞在していたかを徹底的に記録した。 月に2千~3千にのぼる映像デ… |
畑違いの会社員、獣害対策の誘引材開発 シカの行動探り
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