「一票の格差」が最大1・98倍だった昨年10月の衆院選について、二つの弁護士グループが「選挙区によって投票価値が違うのは憲法違反だ」として無効を求めた計16件の訴訟の弁論が28日午前、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)で始まった。弁護士グループと各選挙管理委員会が意見を述べ、午後に結審する。判決は年度内にも言い渡される見通しだ。
最高裁は、最大格差が2倍を超えた2009、12、14年の各衆院選について、「違憲」の一歩手前を意味する「違憲状態」だと判断し、是正を求めていた。これを踏まえて小選挙区の定数は「0増6減」で見直され、昨年の衆院選は小選挙区制の導入以降初めて、最大格差が2倍を切った。国会は2020年以降、人口比で小選挙区の定数を配分するアダムズ方式の導入も決めており、訴訟の焦点はこうした取り組みに対する評価だ。
28日午前は、山口邦明弁護士らのグループが弁論を行った。昨年の衆院選では、神奈川県より人口が少ない大阪府の方が定数が多い「逆転現象」が起きている点などを指摘し、「最大格差が2倍を超えなければ許される、という問題ではない」と主張。午後には、升永英俊弁護士らのグループが意見を述べる。
選管側は「1人1票を厳格に貫けば、地域的一体性を無視することになり、選挙への無関心や投票率の低下を招きかねない」と主張。将来的にも最大格差を2倍未満とする具体的な仕組みを作り上げたとし、合憲だと反論した。
昨年の衆院選をめぐって全国の高裁・支部が出した16件の判決のうち、15件は「合憲」と判断。名古屋高裁は、都道府県にあらかじめ定数1を割り振る「1人別枠方式」が完全には廃止されていない点を踏まえ、引き続き「違憲状態」だとした。(岡本玄)