日本の男子マラソンが活気づいている。きっかけは、昨年の福岡国際で、大迫傑(ナイキ・オレゴンプロジェクト)が2時間7分19秒で日本選手トップの3位に入ったことだ。
大迫傑を支えるナイキ「打倒アフリカ勢」プロジェクト
2月の東京では、設楽悠太(ホンダ)が16年ぶりに日本記録を更新する2時間6分11秒で2位に食い込んだ。井上大仁(MHPS)も2時間6分台で走ったほか、2時間8分台の日本選手が4人、2時間9分台が3人と好記録が続出した。4月のボストンでは川内優輝(埼玉県庁)が悪天候を味方にして日本選手で31年ぶりに優勝を果たし、8月のジャカルタアジア大会では井上が日本勢32年ぶりの金メダルを獲得した。
さらに、10月のシカゴでは大迫が設楽悠の日本記録を破る2時間5分50秒で3位に。1年間に日本記録が2度生まれたのは前回の東京五輪の翌年、1965年に寺沢徹(倉レ)と重松森雄(福岡大)がマークして以来53年ぶり。重松の出した2時間12分0秒は当時の世界記録でもあった。昨年は9人だった2時間10分切りの選手も、今年はすでに15人が達成している。
活況の要因のひとつは、来年9月15日に開催が決定した東京五輪の代表選考会マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の創設だろう。各大会で「2時間11分0秒以内で日本選手1~3位」といった明確なタイム、順位が示され、選手も目標が立てやすくなった。MGC進出者はすでに18人に上っており、日本陸連の河野匡長距離・マラソンディレクターは「最終的には30人ほどになるのではないか」と見通しを話す。
MGC進出者18人のうち15人が箱根駅伝を走っている。「箱根」を走ったことで満足せず、その先をめざす選手が増えてきた証しと言える。大学時代に身につけた20キロを走り切る走力が生かされていると見る。(堀川貴弘)
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マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)
来年9月15日にある男女の東京五輪代表選考レース。昨年の北海道からMGC出場権をかけた戦いが始まった。福岡国際では2時間11分0秒以内で日本選手1~3位、4~6位以内でも2時間10分0秒以内ならMGCに進出できる。日本選手の順位は、すでに進出を決めている選手をのぞく。また、国際陸連が世界記録を公認する大会で2時間8分30秒以内、もしくは上位2レースの平均が2時間11分0秒以内でも進める。東京五輪へはMGC1位と、2位または3位で2時間5分30秒を突破済みの上位、いない場合は2位の選手が代表となり、残り1枠は来年度の福岡国際、東京、びわ湖の成績などで決める。