日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が50億円を超す報酬の過少申告容疑で逮捕された。最近は億円単位の報酬の経営者も増えて従業員との格差も広がる。一体いくらが妥当なのか? 3人の識者に聞いた。
塚越寛さん 伊那食品工業会長
いま世界では「お金があれば、幸せ」という単純な拝金主義がまかり通っています。
庶民感覚では理解できない高額な報酬を受け取っていた日産のゴーン氏は、その典型ではないでしょうか。ブラジル、レバノン、フランスで幼青年期を過ごす複雑な生い立ちで苦労するなかで、悲しいかな、こうした価値観を身につけたのかもしれません。
工場の閉鎖や社員のリストラで業績をV字回復させたゴーン氏を、マスコミは「名経営者」と持ち上げました。しかし、そこにあるのは表面上の数字だけ。すべての働く人々の幸せという観点がすっぽり抜け落ちていました。
我が社は長野県伊那市に本社がある寒天メーカーで、「社員みんなが幸せになるような会社をつくり、社会に貢献する」という理念を持っています。私は高校在学中に肺結核で3年間の療養生活を送りました。その時、多くの本を読み、人生をいかに生きるべきかを考えました。悩み抜いた末に生まれたのが、この考え方でした。
他の識者の意見は
外資系金融などに籍を置いてきた藤田勉さんは、有能な経営者は「世界標準」の報酬をもらうべきだと主張します。一方、一橋大大学院准教授の円谷昭一さんは「日産の事件は日本の報酬開示の悪い部分が表れた」と指摘しています。
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