英のロックバンド「クイーン」が再び脚光を浴びている。早世のボーカル、フレディ・マーキュリーの生涯を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」がヒットし、劇中曲を収めたサントラ盤も好調。関連書籍も売り切れが続く。なぜ今、クイーンなのか――。
なぜ今、クイーン? グッチ裕三さんが語る癖になる魅力
横浜市の派遣社員、金子登志子(としこ)さん(57)は1994年、ロンドンで生まれた長男(24)のミドルネームを、フレディにちなんで「フレデリック」にした。身ごもっているときから毎日のように聞かせたのはもちろんクイーン。「私の最愛の人、フレディのように『自分らしく生きていいんだよ』って思いを込めた」
北海道出身で、出会いは中学3年の時。友人から薦められ、「キラー・クイーン」を聴いた。「ロックは男子のものと思っていたけど、その美しい歌声にやられた」
来日したクイーンのライブを地元で見て、「結成の地の空気を肌で感じたい!」と決意し、23歳で渡英。いったん帰国したときも、再来日したフレディを追っかけ、優しい笑顔で握手してもらったことは一生の思い出だ。
曲とともに魅せられたのはその生き様。象徴する曲が「ボヘミアン・ラプソディ」だと言う。「同性愛という性的マイノリティーは、当時は生きづらかったはず。その中で生まれたあの曲は、自由に生きていいと訴えかけてくる」
没後27年。命日の11月24日には映画館に足を運び、あの頃の興奮に身を任せた。現在のブームは「当然」と言い切る。「だってクイーンは、永遠だもの」
20代も「魂震えた」
「ボヘミアン・ラプソディ」の勢いは止まらない。配給の20世紀フォックス映画によると、4週連続で観客動員数はアップ。延べ約275万人が鑑賞し、興行収入は37億円を超えた。担当者は「通常は公開時がピーク。若い人も含め、SNSなど『口コミ』で評判が広がっている。異例の事態」と驚く。各地で開催されている手拍子可・発声可の「胸アツ応援上映」は大入りが続いているという。
劇中でフレディの心情に呼応するようにかかる曲を収録したサントラ盤の売り上げは22万5千部超。国内でサントラやアルバムを販売するユニバーサルミュージック合同会社には「これを聴いて死んでいきたい」(50代男性)という往年のファンに加え、「魂が震えた。こんな素敵な歌を何で今まで知らなかったんだろう」(20代女性)と、クイーンを知らなかった若年層からも声が届いている。
ブームは書籍にも…