東京電力福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣3人の第35回公判が26日、東京地裁であり、検察官役の指定弁護士が論告求刑を行った。指定弁護士は「巨大津波の襲来を予見できたのに情報収集義務を怠り、何ら措置を講ぜずに漫然と運転を継続した過失がある」と述べ、元会長・勝俣恒久(78)、元副社長・武黒(たけくろ)一郎(72)、元副社長・武藤栄(68)の3被告にそれぞれ禁錮5年を求刑した。
指定弁護士は論告で、最高経営層だった3人には極めて高度な注意義務があり、津波に関する報告があれば積極的に情報を集めるべきだったと指摘。2008年に国の地震予測「長期評価」に基づく津波対策をいったん了承しながら、津波予測が主要施設の敷地の高さ(10メートル)を超える「最大15・7メートル」になると聞いて「対策を先送りした」などと批判した。
起訴状によると、3人は原発の敷地を超える高さの津波が起きる可能性を予測できたのに安全対策を怠り、11年3月の東日本大震災に伴う原発事故で、避難を余儀なくされた双葉病院(福島県大熊町)の入院患者ら44人を死亡させるなどしたとされる。(阿部峻介)