(30日、スピードスケート 全日本スプリント)
2本の500メートルを制した小平奈緒と、2本の1000メートル1位の高木美帆。総合優勝を遂げたのは小平だった。
最終日、まず500メートルで同走し、小平が一気にリードを広げた。初日のタイムを0秒06上回る37秒44をマーク。高木美は38秒台に終わり、最終1000メートルで小平に1秒38以上の差をつけなければ逆転できない状況だった。1000メートルも最終組で一緒に滑り、高木美が1分14秒44の国内最高記録で追い込んだ。しかし、2人の差は0秒69だった。レース後、高木美が「小平選手と同走で充実したレースだった」と言うと、小平も「高いレベルで競い合うと記録はどんどん伸びる」。ともに笑顔で表彰台に上がった。
22歳の新浜、3人目の学生王者
平成最後の舞台で並み居る社会人を押しのけて総合王者に輝いたのは、高崎健康福祉大に通う22歳の新浜立也だった。狙いは世界距離別1000メートルの出場権獲得だったが、「(得意の)500メートルで差を広げられたのが大きかった。タイトルを取れて良かった」。ここ20大会では3人目の学生王者となり、笑みがこぼれた。
この1年で急成長を遂げた1人と言っていい。昨季の平昌五輪代表選考会500メートルは4位。その時のタイムは34秒79。今季はワールドカップ(W杯)2勝を挙げ、今大会初日には34秒50の国内最高記録を更新した。なぜここまでの飛躍を遂げられたのか。
一つはナショナルチーム(NT)入りし、腕を磨くことができたことだ。ただ、NTはトップ選手が海外遠征や合宿など年間300日を一緒に過ごす。授業に出ている暇などない。
新浜にはよき先例があった。大学の同級生で平昌五輪女子団体追い抜き金メダルに貢献した佐藤綾乃だ。当時大学2年の佐藤を育成したい日本スケート連盟と、五輪選手を輩出したい大学の思いが一致。リポートで単位が認められるなどの特例措置が、大学側にできた。「大学の後押しがなければ、五輪での活躍はなかった」と佐藤。NTでは今、そんな佐藤や新浜を始め男子総合2位の山田将矢(日大)ら、1996年生まれがしのぎを削る。
金メダリストへと羽ばたいた佐藤が切り開いた道を、新浜、山田も歩む。新浜は言う。「ここは通過点。(2022年の)北京五輪での金メダルを目指している」。学生スプリント王者は来年、世界距離別、世界スプリントで強豪との真剣勝負に挑む。(榊原一生)