日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が私的な投資で生じた損失を日産に付け替えたなどとして逮捕された特別背任事件で、前会長の勾留理由を開示する手続きが8日午前10時半、東京地裁(多田裕一裁判官)で始まった。昨年11月19日の最初の逮捕以降、ゴーン前会長が公の場に姿を現すのは初めてだ。注目の法廷の傍聴券を求めて、約1100人が並んだ。
カルロス・ゴーン もたらした光と影
ゴーン前会長は、損失を日産に付け替えたなどとされる容疑について「日産に損害を与えていない」などと否認しており、この日の手続きでも同様の主張をするとみられる。弁護人も「勾留に足りる嫌疑がない」などとしており、閉廷後に勾留の取り消しを請求する方針だ。
勾留理由の開示手続きは、ゴーン前会長の弁護人が4日、地裁に求めていた。勾留理由の開示は、容疑者や被告に対して裁判所が勾留を認めた理由を説明する手続きだ。不当な拘束を禁止した憲法34条に基づき、刑事訴訟法で定められた手続きで、勾留理由は公開の法廷で示さねばならない。
東京地検特捜部は昨年12月21日、ゴーン前会長を会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕した。同月31日に地裁は、1月11日までの勾留延長を認めた。最初の逮捕以降、前会長の身柄拘束は少なくとも54日間続く見通しとなっている。
ゴーン前会長は2008年10月、18億5千万円の評価損が生じた私的な投資契約を日産に付け替えた疑いがある。さらに、この契約を戻す際、約30億円分の信用保証の協力を得たサウジアラビアの実業家ハリド・ジュファリ氏に、1470万ドル(現在のレートで約16億円)を送金した疑いが持たれている。