ロシアの世論調査で「ソ連の崩壊を残念だ」と思う人の割合が増えている。プーチン政権による年金の受給開始年齢の引き上げなどで政府に幻滅する国民が多く、平等な社会の実現を標榜(ひょうぼう)したソ連を過剰に評価している面があるという。経済紙ベドモスチは「ソ連崩壊を惜しむ人の増加は、国民の不満が高まっている証しだ」と指摘した。
ロシアの民間世論調査機関「レバダセンター」が先月発表した調査によると、ソ連崩壊を「残念」と答えたロシア人の割合は、2017年より8ポイント多い66%だった。60%以上となったのは9年ぶり。1990年代の経済危機の影響が色濃く残っていた2004年(68%)以降で最も高かった。
残念に感じる最大の理由は「単一経済システムの崩壊」の52%だった。ロシア国民の間では、政府が昨夏発表した年金の受給開始年齢の引き上げなどで経済的な不安感が強まっている。貧富の格差が現在より格段に小さく、生活に十分な額の年金が保証されたソ連時代へのノスタルジーがかき立てられた、との見方が学者らから出ている。
ポスト工業化社会研究センターのウラジスラフ・イノゼムツェフ所長は経済紙RBCへの寄稿で「(ソ連への郷愁の高まりは)多くの政治家が考えているよりはるかに危険な兆候だ」とし、大規模な集会など反政府運動の激化につながる可能性を示唆した。
プーチン大統領は昨年末の記者会見で、富の再配分や福祉政策の充実について「今まさに取り組んでいる。国家プロジェクトの多くがその方向に向けられている」と述べ、国民の理解を求めた。(モスクワ=石橋亮介)