欧州連合(EU)からの離脱を3月29日に控える英国で、EU離脱派と残留派が新年早々、年越しの花火をめぐって火花を散らした。「親EU」を色濃く打ち出した演出に対し、強硬離脱派は「離脱を選んだ民意への裏切り」などと憤っている。
ロンドン中心部で開かれる年越しイベントは毎年恒例で、今年のテーマは「ロンドン・イズ・オープン(ロンドンは開かれている)」。立ち入り制限区域に入れる1枚10ポンド(約1400円)の観覧チケットは10万枚が完売した。
年越しを控えた観光名所の観覧車「ロンドン・アイ」は、EUの旗を思わせる黄色と青色にライトアップされた。新年を迎えた瞬間に花火が始まると、「ロンドン・イズ・オープン」という言葉が、英仏独伊や英国に移民が多いポーランドなど、EU加盟の各国の言語でアナウンスされた。
主催するロンドンのカーン市長はEU残留派で、離脱をめぐる国民投票の再実施を主張している。イベントを前にカーン氏は、こう語った。「ロンドンに住む100万人以上のEU市民をサポートするというメッセージを(テレビなどを通じて花火を見る)世界中の人たちに届けられることを誇りに思う」「新年を迎えるにあたり、EUとの緊密な関係に敬意を表することで、これからもロンドンは開かれた場所なのだということを改めて世界に示したい」
しかし、カーン氏のこうした姿勢や「親EU」的な演出に、一部の強硬離脱派は憤りを表明した。保守党のブリジェン議員は大衆紙サンに、「民主主義への裏切りだ。国際的なイベントを政治的に扱うとは卑劣なことだ」。元保守党欧州議員のヘルマー氏はツイッターで、「英国がブリュッセルと重要な交渉をしている時に、カーンはロンドン・アイに敵方の旗を掲げた」と批判した。(ロンドン=下司佳代子)