米金融大手ゴールドマン・サックスの日本法人が、子どもの貧困問題に取り組む団体を支援している。多くのM&A(企業合併・買収)を手がけた、ゴールドマン・サックス証券(GS)の持田昌典社長は、米国の大学で学んで飛躍した経験から、「教育を受けるチャンスがあることは重要だ」と強調する。
GSはこのほど、NPO法人「Learning for All(LFA)」(東京都新宿区、李炯植代表理事)が展開する学習支援などのプログラムに、今後3年で計約4億円を助成することを決めた。延べ約750人の子どもたちへの教育支援を目指す。
LFAは2010年から、生活が苦しい家庭の小中学生に、スタッフが無償で勉強を教える学習支援や、安心できる居場所づくりの提供をしている。東京都葛飾区で公民館などを活用した支援拠点を開設中だ。助成はこの活動経費に使われる。李代表理事は、「貧困連鎖を裁ち切るには、教育で自立する力をつける必要がある」と強調。「子どもたちが早期から切れ目なく支援を受けられるセーフティーネットを日本に構築するのが目標」と話し、葛飾区での活動をモデル化して全国に広げていくことを目指す。
GSの持田社長は「日本の子どもの7人に1人が貧困状態にあることを知っている人は少ないが、この問題は極めて深刻だ。教育を受けるチャンスがないと人間は、はい上がりづらい。ジャンプする力を得てほしい」と期待する。
持田社長は、人生が変わったきっかけは教育だったという。大学では勉強よりもラグビーに熱中したまま社会人になった。「自分は英語もできない。どうすればいいか」と悩んでいた時、テンプル大のブルース・ストロナク学長と知り合い、「君は絶対にできる」と励まされた。推薦状をもらい米国のビジネススクールへ行き、「死ぬほど勉強した」結果が、今につながったという。
持田社長は「LFAの子どもたちもジャンプしてほしい」と話し、3年間のLFAの実績を判断した上で、さらにサポートする方針だという。(大和田武士)