リーマン・ショックの発生から15日で10年がたった。米国発の金融危機は世界的な大不況につながり、モノが売れなくなり、多くの人々が職を失った。危機で人生を変えられた人には今も深い傷が残る。社会の分断、人口減――10年で世界は大きく変容した。
リーマン・ショック10年 拡大封じた対策、残る副作用
特集:リーマン・ショック
「『リーマン』から人生がおかしくなった」
東京都内。通院しながら仕事を探す男性(41)は、この10年を振り返る。
静岡県内の従業員約80人の電子機器工場で、正社員として働いていた。手取りは月19万円、年2回のボーナスもあった。家賃5万3千円の2DKアパートで「余裕はなかったけど、普通に暮らせていた」。
2008年9月に米証券大手リーマン・ブラザーズが経営破綻(はたん)。その年の冬、余波は遠い日本の工場にも及んだ。急激に工場の仕事が減り、人員削減が決まった。「今なら退職金が出せる。まだ若いから新しいことをやってみたらどうだ」。社長の言葉に従った。
その後は「不景気で職がなく、日銭を稼ぐので精いっぱい」。09年7月の失業率は5・5%と、前年同月の3・9%から急速に悪化していた。貯金は底をつき、アパートを出て、半年以上車で寝泊まりした。食事は1日1回の弁当だけ。食費やガソリン代の借金は250万円を超えた。
10年12月に上京して偶然、…