スルガファミリー
シェアハウス問題で、融資資料の改ざんなど多数の不正が明らかになったスルガ銀行。静岡が地元で、かつては堅実とみられていた地方銀行は、収益最優先の「ノルマ銀行」に変質していた。それを招いたのが、120年余りにわたり経営を支配した創業家の岡野一族だ。私物化ともいえる経営の内実を探るため、記者が現地を歩いた。
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都心の一等地で高級分譲マンションが十数室まとめて売りに出そうだ――。昨秋、そんな情報が間取り図とともに不動産業界に流れた。
1室130~400平米超で、いちばん狭い部屋でも5LDK。相場価格は1室2億~7億円で計約40億円。所有者は、シェアハウス融資の不正問題を起こしたスルガ銀行(静岡県沼津市)の創業家・岡野一族の「ファミリー企業」だった。
スルガ銀は昨年末、岡野光喜前会長兼CEO(最高経営責任者)らが経営に関わるファミリー企業への不適切融資や寄付に関する調査報告書を公表。シェアハウス問題で立ち入り検査した金融庁がファミリー企業問題も指摘し、外部弁護士の調査委員会が調べた。
スルガ銀は設立から120年以上、岡野一族が経営トップだった。複数のファミリー企業や法人がスルガ銀株の1割超を持ち、経営を支配した。ファミリー企業は多くの不動産を持ち、静岡で美術館、飲食店を営む。株式配当と不動産賃料が主な収入源とみられる。
昨年末の調査報告書によると、ファミリー企業はスルガ銀から融資を受け、同行の支店や寮、美術品を買っていた。銀行が売却益を得る「益出し」が目的だったと指摘された。
ファミリー企業の融資返済のため、スルガ銀が美術品購入の名目などで47億円をファミリー企業に寄付し、うち38億円を返済にあてる不正も判明した。融資は岡野前会長の実弟の岡野喜之助氏(元副社長、16年死去)が主導し、融資額は02年に1200億円超に達し、昨年3月も488億円あった。
ただ、冒頭のマンションについては調査報告書でも指摘されていない。
マンションは多くが00年以降に取得されていた。スルガ銀から買ったものではなかった。結局売却はされなかったが、ファミリー企業がマンションを持っていた目的は何だったのか。
マンションを持つファミリー企…