東京都渋谷区の原宿・竹下通りで元日の未明、暴走した車に8人がはねられ重軽傷を負った。警視庁は思想的背景のあるテロではないとみているが、車両による無差別襲撃は近年のテロ対策で最重要視されてきた。完璧に防ぐことは難しく、重い課題が突きつけられている。
原宿逆走の目撃者「異様な雰囲気」 強烈な灯油の臭いも
原宿暴走の容疑者、免許取得は1カ月前 東京に居住歴も
捜査関係者によると、殺人未遂容疑で逮捕された日下部(くさかべ)和博容疑者(21)=大阪府=は当初、今回の現場に近い明治神宮の人混みで高圧洗浄機で灯油をまいて火をつけようとしていたとされる。明治神宮は初詣に伴う交通規制などで近づけず、計画を変更していたという。車が侵入した竹下通りの明治通り側の入り口には警察車両が置かれていたが、完全にふさがれてはいなかった。
渋谷区などによると、竹下通りでは6年前、JR原宿駅側の入り口に突入しようとする車を防ぐ金属製の柱の設置を住民らと検討したが、1基あたり約500万円という費用面などの課題から見送られたという。
日下部容疑者に政治的な主義主張に基づく活動歴は確認されておらず組織へも加入していない。
警視庁は今回の事件をテロとは位置づけていないが、近年のテロと特徴は共通する。
一つは、人が集まる場所を無差別に狙う「ソフトターゲット型」である点。近年は政府機関や要人を狙う旧来のテロに代わり、一般の人が巻き込まれる事件が世界的に相次いでいる。
2016年には仏・ニースで大型トラックが花火の見物客に突っ込み、80人以上が死亡。車両を使うテロは過激派組織「イスラム国」(IS)が推奨してきたこともあって広がった。警視庁も隅田川花火大会などで機動隊の車両で入り口を塞ぐ対策を取っている。
今回も同時間帯には近くの渋谷駅前で大量の警察官が動員されていた。年末年始のカウントダウンで何らかの混乱が起きることが想定できたためだ。毎年多くの初詣客が訪れる明治神宮周辺にも警備車両やパイプ柵が配置されていたが、竹下通りでは厳重な警戒態勢は敷かれていなかった。警視庁幹部は「細かい路地まで全てを塞げるかと言われれば、際限がなく難しい」と話す。
もう一つの近年のテロの特徴は…