朝鮮戦争時に国連安全保障理事会決議で創設された朝鮮国連軍の改革が進んでいる。背景には、朝鮮戦争の平和協定への動きや、朝鮮半島有事の際の指揮権などを巡り、影響力低下を懸念する米国の事情がある。国連軍の後方司令部がある日本とも無関係ではない。(ソウル=牧野愛博)
昨年11月に在韓米軍司令官に着任したエイブラムス陸軍大将は、その直前の9月25日、米上院公聴会で「非武装地帯は国連軍司令部の管轄だ」と強調した。
国連軍、米韓連合軍、在韓米軍の司令官を兼ねる同氏の発言について韓国軍の元将校は「国連軍の機能を強化したい米国の戦略を示したものだ」と語った。
在韓米軍はこの戦略を国連軍の「再活性化」(リバイタリゼーション)と呼ぶ。在韓米軍との兼職者を減らす一方、米韓を除く国連軍参加16カ国の要員を増やしている。昨夏までに、米第7空軍司令官が兼ねていた国連軍副司令官ポストをカナダ軍中将に譲った。佐官級も、英豪加などの軍人を中心に米軍との交代が相次ぐという。
国連軍は従来、非武装地帯で事件が起きても、対応を韓国軍に任せることが多かった。今後、国連軍が独自に任務を遂行する基盤を作り、「味方」を増やす狙いが米国にはある。
この動きは盧武鉉(ノムヒョン)政権(2003~08年)で始まった。北朝鮮に接近し、米国と一線を画そうとした盧政権が「自主国防」を強調。有事の際に米軍に任せていた韓国軍の指揮権を戻すよう働きかけたからだ。
当時の韓国国防省幹部によれば、ベル在韓米軍司令官が影響力低下を憂慮。代わりに国連軍司令部の再活性化を目指す考えを周囲に示したという。
その後、保守系の李明博(イミョンバク)、朴槿恵(パククネ)両政権は米韓同盟の弱体化を懸念して慎重だったが、現在の文在寅(ムンジェイン)政権は「指揮権を韓国に戻す」と主張。在韓米軍司令官がトップを兼ねる米韓連合軍司令部を改編し、韓国軍将校を司令官に据えるよう求めている。
文政権は在韓米軍に対する分担金額を巡る交渉でも大幅増額を拒み、トランプ政権と対立している。米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD(サード))が配備された慶尚北道星州(キョンサンプクトソンジュ)の環境影響評価作業も進まず、本格運用ができずにいる。
韓国軍元将校は「文政権の動き…