障害者の雇用を積極的に進めてきた宅配大手ヤマトホールディングスの特例子会社スワン(本社・東京)が展開する「スワンカフェ&ベーカリー」が今月、海外初のフランチャイズ店をベトナム南部ホーチミンに2店舗オープンさせた。まずは現地の障害者の女性2人が働き始めた。
日本の風景写真を掲げたおしゃれな店内にキム・ルエンさん(20)が笑顔で客を招き入れる。もう1店舗ではハ・アインさん(18)が客の注文をとっていた。アインさんは生まれつき左手がまっすぐに伸びず、力仕事は難しい。スワンが初めての職場だといい、「障害のない人と同じ賃金のほか、通勤に必要な交通費ももらい、とてもやりがいがある」と話した。
ベトナムは労働法で障害者雇用を奨励しているものの、雇用義務はなく、実際には障害者が働き口を見つけにくい状況がある。ヤマトとベトナムで配送サービスの合弁事業をする企業を経営するディン・ビン・クオンさん(43)が「働く場をつくることができれば」と、スワンとフランチャイズ契約を締結。2020年までに国内に10店舗を構え、スタッフの3割を障害者にする目標を掲げる。
販売するパンの原料は日本から輸入。スワンのパン製造に協力してきたタカキベーカリー(本社・広島市)の担当者が、現地で日本と同じ製法でパンづくりの技術指導をする。
スワンはヤマト運輸元社長の故小倉昌男氏が、ヤマト福祉財団、ヤマトホールディングスと設立した。1998年6月に銀座にスワンベーカリー1号店をオープンし、現在は国内に直営4店、フランチャイズ店23店を展開している。(ホーチミン=鈴木暁子)